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『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ

2008/01/16 (火) 冬 日 偶 題

とう じつ ぐう だい
    さい  こう 

りゅう こう しゅく こつ つるはな

しょう てつこしだい てつかた

けい りょう ちょう ずるを

さらおぼほう ねんげん ずるを
流光倏忽箭離弦

小姪過腰大姪肩

閨裏看他両児長

儂身更覚滅芳年
文化十一年 (1814) 冬の作。二十八歳。

年月の流れは速く、まるで弓を離れた矢が飛んで行くように、たちまちの中に過ぎ去ってしまう、
小さい方の甥でももう私の腰より背が高くなり、大きい方の甥は肩までになってしまった。
いつも部屋の中にいて、この二人の子供が大きくなって行くのを見ていると、私自身の若さがだんだん失われていることに、あらためて気づかされる。

○流光==流れるがごとく過ぎ去る時間。
○倏忽==すみやか。にわか。
○箭離弦==箭は矢。弦は弓の糸
○小姪==小さい甥。
○大姪==大きい甥。
○閨裏看他両児長==閨裏はねやの中。他は動詞につく助字として 「看他す (みる) 」 とも読みうるが、江戸時代の人は概ね 「他の両児の長ずるを看る」 というように読んでいる。
○儂==われ。
○芳年==若い年月、青春のとき。

『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ