甲
戌
仲
秋
妙
興
寺
に遊
ぶ。 帰
路
涼
傘
を失
い、戯
れに此
の作
有
り
江
馬
細
香
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翠
翠
たる円
陰
離
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当
時
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蓋
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髻
を遮
りて常
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い
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新
霽
秋
山
蕈
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微
風
春
寺
花
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一
朝
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ぞ吾
儂
を棄
てて去
る
畏
景
に君
を懐
うこと調
飢
の如
し
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翠翠円陰不可離
当時聘得自京師
蓋遮高髻常相伴
柄託柔?随所之
新霽秋山尋蕈日
微風春寺酔花時
一朝何棄吾儂去
畏景懐君如調飢 |
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文化十一年 (甲戌、1814) 八月の作。 二十八歳 。
深々と青く、まるい陰を手放すことが出来なかったのに、あの時、わざわざ京の都から取り寄せたのだもの。
いつも私に寄り添って、高く結い上げた私のまげを日ざしから蔽いかくしてくれたかさ。私の柔らかな手にゆだねて、行く所行く所についてきてくれた柄。
晴れあがったばかりのすがすがしい秋山に、きのこ狩りに行った日も、春風のそよ吹くお寺で、咲き乱れる桜の花に酔いしいれた時も一緒だったのに。
ある日突然、私を捨てて去ってしまったのはどうしてかしら。
強い日差しに照りつけられては、まるでひもじくてたまらない朝の時のように、あなたを思い焦がれて仕方がないわ。
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○翠翠==翠は青緑色。翠陰は青葉などの落とす、みどりのかげ。
○聘==召す。まねく。賢者などを招き寄せる意に用いる語を擬人的に用いている。
○高髻==高く結ったまげ。
○柔? (ジュウテイ) ==やわらかいっぱいな (柔の芽)
で、女性の白い手にたとえる。
○尋蕈==きのこ狩り。
○春寺酔花==春の寺で花を賞す。
○一朝==一朝はある朝、または一たび。
○畏景==夏の日ざし。景は日。
○調飢==朝食の前、空腹でひもじいこと。
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