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日 本 漢 詩
『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ

2007/11/15 (木) 過 禁 門

きん もん
さい とう せい けん (せつ どう )

きん 殿でん さい さい より

ぎょ こう いつ いつ せい はし

しゅん ぷう へだ てずせん ぼんさかい

いてじん おとじょう えんはな
金殿崔嵬出彩霞

御溝汨汨走清沙

春風不隔仙凡界

吹落人衣上苑花
語 釈

○金殿==黄金で飾った立派な御殿。美しい天子の宮屋。禁門・金闕と同じ。
○崔嵬==高大なさま。
○出彩霞==彩霞は美しい雲気。出はその上に高く聳えているのをいった。
○御溝==宮城のお堀。
○汨汨==水のはやく流れるさま。
○仙凡界==仙人の住む世界と人間のすむ世界。仙界は宮苑内をさしていったもの。
○上苑==天子の庭園。上林・上林苑・宮苑 と同じ。

題 意
京都の御所の門前を過ぎて作った詩。禁門は禁裏の御門、即ち京都御所をいう。
通 釈
御所の宮殿は高く彩霞の上にそびえ、お堀の水はさらさらと清沙の上を走っている。宮垣の内は俗人の近づき得る所ではないが、ただ春風は畏きあたりと塵界の隔てなくふきわたって、門前を通る人の衣に、御苑の花を吹き落とすことである。
余 談
清致あり、風韻あり、結句に、上苑の花びらを衣上に点じ得て、かしこくも、また勿体無いが嬉しき限りであるの意を述べている。作者の皇室尊敬の気持ちがよく表れている。
『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ