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日 本 漢 詩
『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ

2007/09/27 (木) 春 雨 到 筆 庵

しゅん ひつ あんいた
ひろ けん (きょく そう )

しゅう そう けい みちななめ なり

もももつとおおところ きみいえ

ばん らい なに ものもんたた きていた

あめ じんらつ
菘圃葱畦取路斜

桃尤多處是君家

晩來何者敲門至

雨與詩人與落花
語 釈

○菘圃==唐菜の畑。菘は和名トウナ。又ふゆな・いんげんなともいう。圃は畠。
○葱畦==葱はねぎ。畦はあぜ、又うね、又はたけ。
○取路斜==路を斜めにたどること。
○桃尤多處== 「尤」 を 「花」 に作るものが多いが、結句の落花の 「花」 と重複するので 「尤」 にしたものと思われる。
○晩來==夕方に。
○詩人==旭莊自らいう。

題 意
春雨の中を冒して友人筆庵を訪ねたという意。
筆庵は未詳。 この詩は日田にいた頃の作であるから、筆庵もおそらく日田の人であろう。
通 釈
唐菜の畑やねぎのあぜ路を斜めにとって進む。美しい桃の一段と咲き乱れたあたりが君の家である。
閑寂な幽居に、夕暮れ門をたたいて訪れる者は、ただ春雨と吾が輩と落花だけである。
余 説

桃花は、桃花源をはじめ、仙人や隠者に関係が深いので、筆庵の閑居が桃花に囲まれているのを写して俗塵の到らぬ所であることを示した。

『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ