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日 本 漢 詩
『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ

2007/09/25 (火) 畫 竹

ちく
いつ (てき )

らく らく たるきょう ちゅうたけ

いつ おう じて

しょう うん つてさん ぜず

滿まん ぷく しゅう せい おこ
落落胸中竹

一揮應手成

湘雲凝不散

滿幅起秋聲
語 釈

○落落==さっぱりとした気分。細事にとらわれない満灑な気持ちを形容していう。
○胸中竹==宋の文同 (字は与可) は笑笑先生或いは石室先生と号し、竹及び山水を画いて名声が高かった。そこで、宋の晁補之 (字は無咎) の詩に 「与可画竹時 胸中有成竹」 とある。
○一揮==ひとたび筆を揮って画をかく。
○應手成==手の動くがままに立派な画が出来上がる。
○湘雲==湘雲いえば湘水にかかる雲であるが、ここでは竹の背景として画かれたぼかしの雲。
○凝不散==こりかたまって動かないこと。
○滿幅==画幅全体。
○秋聲==さびしい秋の音。笹の葉ずれの寂しい音をさすのであろう。

通 釈
爽快な胸中の成竹を筆に托し、一たびこれを揮えば、手に従って美事に苦も無くできた。湘水のほとりの雲が凝ったようにまわりを籠めて、幅全体にいかにも秋の声が起こって来そうである。
余 説

他人の画竹に賛したものと思われるが、いかにも竹の滿な韻致を描き出して趣が深い。
「胸中成竹あり」 というと、普通 「胸に成算がある」 という意味に用いるが、ここは本義のままに用いてある。

『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ