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日 本 漢 詩
『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ

2007/09/25 (火) 昌 平 橋 納 涼

しょう へい ばし のう りょう
いつ (てき )

うん わたつんざ いでつき ななめあきら かなり

さい かつ かぜふく んで かる

すう てんこう とう きょう がいいち

ろう ちゅう いつ たん しゅう せい
夏雲擘絮月斜明

細葛含風歩歩輕

數點篝燈橋外市

籠蟲一擔賣秋聲
語 釈

○夏雲擘絮==夏の白い雲が綿をちぎったように重なり合っていること。
○月斜明==月の光ガ斜めに差して明るいこと。
○細葛==細い葛の繊維で織った着物。即ちかたびら。
○篝燈==かがり火。
○橋外市==橋のたもとの夜店。夜店は漢語では夕市・夜市という。
○籠蟲==籠に入れた昆虫、鈴虫・松虫・はたおりの類。
○一擔==一人が天秤で担ぐ荷。一荷。

通 釈
夏の白い雲が綿をさいたように、その裂け目から夕月が斜めに明るい光を投げている。
薄いかたびらの袖は風を含んで涼しく、歩く足どりも自然に軽い。幾個処かのかがり火があかあかと燃えて、橋畔の夜店には一荷の籠虫をならべて、早くも秋の声を売っている。
余 説

昆虫の鳴き声に秋を感ずる。昆虫を売っているのを、 「売秋声」 と表現したところが面白い。一読して涼味が漂ってくるようである。

『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ