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日 本 漢 詩
『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ

2007/08/09 (木) 雲 州 雑 詩

うん しゅう ざつ
しな かん (はく こく )

たい がく けづさん まん じょう

ぜつ てん ひょう びょう うち

せつ ぴょうさんきた つてひょう

とう せい うご かすほく めいかぜ
大嶽削成三萬丈

絶巓縹渺有無中

吹散雪氷來作雹

涛聲動地北冥風
語 釈

○大嶽==伯耆の大山。出雲からその雄姿が遠く望まれる。
○削成==斧で削り成したように聳えている。
○絶巓==絶頂。最上のいただき。てっぺん。
○縹渺==高く、遠く、かすかなさま。
○有無==あるとなしと。
○雪氷==雪や氷。
○雹==ひょう。雨が凍って氷となり、雨に混じって降るもの。
○涛聲==大波の声
○北冥==北の海。ここは日本海を指す。

通 釈
(平声東韻) 神人が大斧をふるって削り成したかのように。、三万丈の大山の峯が聳えて、絶巓は雲煙の中に、あるが如く、なきが如く、遠くかすんでいる。
おりから雪や氷を吹き散らかし、時ならぬ雹を降らせて来たと見たら、なんと北海 (日本海) の風に、波涛が大地を動かし鼕々と鳴っていたのである。
題 意

この詩は、出雲 (島根県) から大山を望んで作ったものである。大山は鳥取県西部にある標高1713メートル、南北28キロに亘る広大な裾野を持つ休火山で、中国地方第一の高峰。通称、伯耆富士、一名角磐山、大山隠岐国立公園の主要部をなす。 春は野鳥、夏は登山、秋は紅葉、冬はスキーでにぎわう。
この詩、一に 「富士山」 と題するが、誤りである。

余 説

白谷は猪飼敬所・亀田鵬斎に愛せられ、当時、頼山陽に匹敵するものは白谷であるといわれたという。この詩の如き、さすがに豪壮の気が満ちている。

『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ