吟剣詩舞漢詩集  西郷隆盛漢詩集  吉田松陰漢詩集
日 本 漢 詩
『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ

2007/08/09 (木) 秋 盡

あき
たて (りゅう わん )

せい むな しくおどろさい げつなが るるに

かん てい どく すればおもひ ゆう ゆう

ろう しゅうごとはら へどもつくがた

そく そく せい ちゅう また あきおく
靜裏空驚歳月流

閑亭獨坐思悠悠

老愁如葉掃難盡

??聲中又送秋
語 釈

○靜裏==静寂のうちに。
○空驚==わけもなくただ驚きあきれる。
○歳月流==年月が経って、自分も老いた。
○閑亭==人気のない、しずかなあずまや。亭は家の意。
○思悠悠==思いのはてしないこと。
○老愁==老いのうれり。
○??(ソクソク) ==辞書には 「木の葉の茂ったさま」 、或いは漱漱と同じく 「物のはらはら落ちるさま」 としてあるが、辞海には 「按ずるに亦用ひて声を状するの辞と為す」 とある。この解がここでは妥当。

通 釈
いつしか静かに歳月が流れて、我ながらただ驚くばかりである。ひっそりした家の中に独り坐っていると、過ぎた日の思い出が、あれやこれやと、果てしもなく続く。やるせない老いのさびしさ、それは掃っても掃ってもつづいて、絶えることのない落ち葉のようで、そのそくそくたるかすかな音を聞きながら、こうしてまた今年の秋を送るのである。
題 意

晩秋のさびしい風景をうつして、己の老か懐を托した詩。

余 説

老いのさびしさを巧みに写した。柳灣の半生の誠実な作に似ないが、詩人亦自ら面目多しという所か。

『日本漢詩 新釈漢文大系』 著・猪口 篤志 発行所・明治書院 ヨ リ