(S−13) 失 題 (久坂 玄瑞) |
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吟:内野 紫仁 |
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皇国の威名
海外に鳴る
誰か甘んぜん
烏帽犬羊の盟
廟堂
願わくば賜え尚行の剣
直ちに将軍を斬って
聖明に答えん |
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(S−14) ナレーション |
太平の眠りを覚ます蒸気船、たった四隻で夜も眠れず・・・・、
こんな戯れ歌が流行った六年前の秋も深まった頃、
江戸から兄上と門下の金子重輔が、罪人として萩に送られてきました。
国禁を破って伊豆の下田沖に停泊中のアメリカ船に忍び込み、 海外の渡ろうとした科で・・・・・。 |
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(S−15) 漫 述 (佐久間 象山) |
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吟:長屋 伯鷹 |
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謗る者は
汝の謗るに任せ
嗤う者は
汝の嗤うに任せん
天公本我を知る
他人の知るを覓めず
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(S−16) ナレーション |
一年と二ヶ月、萩の獄舎で過ごした兄上は、十二月に入って、自宅謹慎となり、杉の家に戻ってまいりました。
再び講義が始まりました。翌、安政三年八月、塾は松下村塾と名づけられ、明治のご維新の原動力となる人々がここに育つのです。
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(S−17) 磯 原 客 舎 (吉田 松陰) |
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吟:細川 紫江・俵積田 輝孝 |
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海楼酒を把って長風に対す
顔紅に耳熱し酔眠濃かなり
忽ち見る雲濤万里の外
巨鼇海を蔽うて艨艟来る
我吾軍を提げ来って此に陣す
貔貅百万髪上衝す
夢断え酒解けて燈も亦滅す
濤声枕を撼かして夜鼕々 |
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(S−18) ナレーション |
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(S−19) 逸 題 (橋本 景岳) |
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吟:森本 梅春・野田 雅詠 |
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飛雨蕭々孤雁鳴く
壮心凛々また驚くに堪えたり
忽ち聞く城裡一声の笛
既に見る門前数十の兵
地に投じ天に投じて左右に開き
前を衝き後を衝いて縦横に破る
氷刀三尺清風に拭えば
千里雲晴れて月五更 |
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(S−20) ナレーション |
「幕府といえども天皇の臣下、勅許を得ずしての調印は断じて許せぬ」
兄、松陰の身辺の動きは、にわかに慌しくなりました。
時を置かず 「大義を議す」 の一文を藩に提出。
この日を境に松下村塾は幕府批判から、討幕へと変かしてゆくのが、女の私にもわかりました。 |
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(S−21) 偶 成 (木戸 孝允) |
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吟:谷澤 暁声・熊谷 峰龍・鍵谷 鷹隆 |
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一穂の寒燈眼を照らして明らかなり
沈思黙坐無限りなきの情
頭を回らせば知己人已遠し
丈夫畢竟豈名を計らんや
世難多年万骨枯れ
廟堂の風色幾変更
年は流水の如く去って返らず
人は草木に似て春栄を争う
邦家の前路容易ならず
三千余万蒼生を奈んせん
山堂夜半夢結び難し
千岳万峯風雨の声 |
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(S−22) ナレーション |
萩のお城、指月城が茜色の夕焼けに染まり、
その上空を、雁木の列を組んで飛ぶ雁の姿が見られるようになったある日、
塾の庭先に佇んで、じっと茜色の夕空を見上げている兄上の、後姿を見かけたことがあります。
美しい絵のような光景でしたのに、何故か私には、兄松陰の一番寂しそうな姿として、強く心に残ったのでした。 |
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(S−23) い か に せ ん
(織 女) |
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吟:女 性 全 員 |
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いかにせん
心に問えば 思ふこと
とどめがたくも
萩に吹く風
いかにせん
心に問えば 思ふこと
とどめがたくも
萩に吹く風 |
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(S−24) 老 泣 (梁川
星巖) |
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吟:北村 洲城 |
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老泣声無く客衣を湿す
天涯の兄弟信来ること稀なり
半肩の行季両鬢の雪
満望の雲山何れの処にか帰らん |
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(S−38) 囚 中 作 (高杉 晋作) |
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吟:内海 快城・大串 鷹克・平内 精鵬 |
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君見ずや死して忠鬼となる菅相公
霊魂尚在り天拝の峰
又見ずや石を懐き流れに投ず楚の屈平
今に至るも人は悲しむ泪羅江
古より讒間忠節を害し
忠臣君を思うて躬を懐わず
我も亦貶謫幽囚の士
二公を憶い起こして涙胸を沾す
恨むを休めよ空しく讒間の為に死するを
自ら後世議論の公なる在り |
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(S−39) ナレーション |
うす紫の栴檀の花が五月の雨にしきりに散っていた、あの別れの日から一ヵ月後。
兄、松陰は日比谷の江戸藩邸に唐丸篭で着いた模様でした。
そして運命の十月十六日、幕府取調べ方の評定の結果が出たのです。
死刑。決定は井伊大老。 |
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(S−40) 身 は た と え (吉田 松陰) |
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吟:鈴木 永山・山口 華雋 |
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身はたとえ
武蔵の野辺に
朽ちぬとも
とどめおかまし
大和魂
身はたとえ
武蔵の野辺に
朽ちぬとも
とどめおかまし
大和魂 |
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(S−41) ナレーション |
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(S−42) な な た び も (吉田 松陰) |
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吟:安田 鷺迪・小林 快川 |
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ななたびも
生きかへりつつ
えびすをぞ
攘はんこころ
われわすれめや
ななたびも
生きかへりつつ
えびすをぞ
攘はんこころ
われわすれめや |
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(S−43) 辞 世 (吉田 松陰) |
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吟:宮田 実龍 |
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我今国の為に死す
死して君親に背かず
悠々たり天地の事
鑑照明神にあり |
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(S−44) ナレーション |
安政六年九月十四日、梅田雲浜殿獄中にて病死。
十月七日、橋本左内・頼三樹三郎・茅根伊予之助・水戸・越前・薩摩・安芸の勤王雄藩の志士数名死刑。
吉田松陰死刑。三十歳・・・・・。 |
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(S−45) 松 下 村 塾 (徳富蘇峰) |
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吟:辰巳 快水 |
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柱頭歴歴たり刀痕を見る
想うに堪えたり当年国士の魂
花は落つ東光寺畔の路
松陰天子書を読むの村 |
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(S−46) ナレーション |
日本の夜明を夢に見、理想に燃え、多くの志士達を育てた男。
徳川幕府の度重なる弾圧にもめげず、敢然と立ち、最後の最後まで尊皇一途を貫いた男、吉田松陰・・・・。
吉田松陰が夢に見た、日本の長い長い夜が、今燦然と光を放って明ける・・・・・・。 |
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(S−47) 失 題 (勝 海舟) |
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吟:出演者全員 |
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他年の蹤跡埃塵に没す
心情を揣摩して天真を思う
華屋美なりと雖も是れ浮榮
富は泡沫の如く名は烟の如し
笑うて看る江山依然として碧なるを
行蔵豈亦人に感せんや
風は敗葉を捲いて夜寂々
嘯響凛然として一劍寒し |
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