橋 本 左 内 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)

獄 中 作 (三)
欹枕愁人愁夜永

陰風刺骨拆三更

皇天憶応憐幽寂

一点星華照?明


(/rp>ごく (/rp>ちゅう(/rp>さく (三)
(/rp>まくら(/rp>そばだ てて(/rp>しゅう (/rp>じん (/rp>よる(/rp>なが きを(/rp>うれ
(/rp>いん (/rp>ぷう (/rp>ほね(/rp> して(/rp>さん (/rp>こう(/rp>
(/rp>こう (/rp>てん (/rp>おも うに(/rp>まさ(/rp>ゆう (/rp>せき(/rp>あわ れむなるべし
(/rp>いつ (/rp>てん(/rp>せい (/rp> (/rp>まど(/rp> らして(/rp>あき らかなり

愁い深き囚人は、眠られぬまま枕を斜めにして、夜明の遠いことにまた愁いを深めている。北風の冷たさが骨に沁みとおる中、三更を知らせる拆が聞こえる。
それでも、天はこの寂しさを憐れんで下さったのであろう。美しい星がひとつ、窓を照らして輝いている。

欹枕==本詩では牢内で寝つかれぬまま、枕をかい直したりして心落ちつかぬさまをいうのであろう。
陰風==冬の北風。
拆==拍子木を打ってまわり、時刻を知らせること。 三更==夜を五つの時間帯に分けた三番目。真夜中。 憶==想に同じ。
幽寂==ひっそりと寂しいこと。 星華==星。華は、星の光気をいう。