橋 本 左 内 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)

獄 中 作 (二)
二十六年如夢過

顧思平昔感滋多

天祥大節嘗心折

土室猶吟正気歌


(/rp>ごく (/rp>ちゅう(/rp>さく (二)
(/rp> (/rp>じゅう (/rp>ろく (/rp>ねん (/rp>ゆめ(/rp>ごと(/rp>
(/rp>かえり みて(/rp>へい (/rp>せき(/rp>おも えば(/rp>かん (/rp>ます (/rp>ます (/rp>おお
(/rp>てん (/rp>しょう(/rp>たい (/rp>せつ (/rp>かつ(/rp>しん (/rp>せつ
(/rp> (/rp>しつ (/rp>(/rp>ぎん(/rp>せい (/rp>(/rp>うた

今日までの二十六年間、歳月は夢のように過ぎてしまった。往時を顧れば感慨はいよいよ深い。
かねて文天祥の節義には感服してきたものだ。土牢の中に囚われの身となっても、なお昂然と 「正気の歌」 を吟じていたのだから。

平昔==過去の日々
天祥==南宋末の文天祥。侵攻する元軍に捕らえられて大都 (北京) の土牢に幽閉されたが、屈することなく 「正気の歌」 を作った。
大節==元に降伏することなく死刑となっていった文天祥の立派な節義。
嘗==ここは常と音通で、 「常に」 と訓むことも出来る。
心折==心服する。
土室==文天祥が入れられている土牢。この時、左内も牢中にあることから、文天祥にはとりわけての共感がある。