橋 本 左 内 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)

西 洋 雑 詠 (三)
男児豪勇尚功名

不似唐人悲遠征

南戦北伐休不久

更之碧海掣長鯨
西(/rp>せい (/rp>よう (/rp>ざつ (/rp>えい (三)
(/rp>だん (/rp> (/rp>ごう (/rp>ゆう にして(/rp>こう (/rp>みょう(/rp>たつと
(/rp>とう (/rp>ひと(/rp>えん (/rp>せい(/rp>かな しむに(/rp>
(/rp>なん (/rp>せん (/rp>ほく (/rp>ばつ (/rp> みて(/rp>ひさ しからざるに
(/rp>さら(/rp>へき (/rp>かい(/rp> きて(/rp>ちょう (/rp>げい(/rp>せい

西洋の男児はまことに勇ましく、功名を立てることを貴んでいる。かの唐代の詩人が、しばしば遠征の悲しみを歌うような女々しさはない。
西洋の各地でしきりに戦争を続け、その戦が終っていくらも経ていないのに、さらにまた青海原に乗り出して世界の覇権を握ろうとしている

唐人悲遠征==遠征は、遠く旅に出る事。唐代の詩では、遠征を嘆く例は多い。
南戦北伐==十九世紀のはじめから二十年近く、ナポレオンが中心となって欧州全土を巻き込んだ続いた事を念頭にしているのであろう。
掣長鯨==掣は、ひきとどめて制圧すること。長鯨は、大きな鯨。大海の巨大な鯨を制することで、世界を制圧することに喩える。