橋 本 左 内 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)



しょ しゅう かん  あ
りゅう りゅうつな ぐこと

くゆく漁舟(/rp>ぎょしゅう(/rp> わんと(/rp>ほつ

冷凄(/rp>れいせい たる虫響(/rp>ちゅうきょう 朦朧(/rp>もうろう(/rp>つき

(/rp> べて愁人(/rp>しゅうじん 枕上(/rp>ちんじょう(/rp>あき(/rp>
初 秋 有 感
無復柳糸繋紫?

五湖行欲買漁舟

冷凄虫響朦朧月

渾作愁人枕上秋
 
安政五年 (1858) の作。二十五歳。
七月五日の春嶽蟄居からさほど日を隔てぬ頃の詩、

もはや柳の枝に栗毛の駿馬を繋いで、意気揚々と活動する日は帰るまい。五湖へと去って漁師の舟を買い、この世を捨ててしまおうか。
冷ややかに悲しい虫の声も、おぼろに霞んだ空の月も、すべては愁いに沈み込んだ身の枕辺に、寂しい秋を思い知らせるものばかりだ。

紫?(シリュウ) == 黒栗毛の馬
五湖==
俗世を去って隠れ住もうとする意をいうに、きまって用いられる地名。
枕上==枕もと。寝床のあたり。