橋 本 左 内 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)


ゆう じん るにしゃ
いつ ふう しょ いつ かん

たるはまさきみおもとき

かんひら きていち どく すればあい するがごと

すでまぬがてん がい ろう するを
謝 友 人 見 問
一紙封書一巻詩

寄来正値憶君時

開緘一読如相話

已免天涯労夢思
 
嘉永六年 (1853) 頃の作か。二十歳。
遠く離れた友人から手紙と詩を届けられたことへの謝詩。

一通の手紙と一巻の詩。それが届けられてきたのは、ちょうど君のことを考えている時でした。
封を開いて拝読すれば、まるで面と向かって語り合っているような気がします。
おかげでもう、遥か彼方の君のことを、あれこれと思いわずらう必要は」なくなりました。

開緘==緘は手紙の封じ目。封書を開いて読むこと。
正値==ちょうど、その時にぶつかる。値は、遇う、あたる。
天涯==天のはて、きわめて遠い地をさしていう。
労夢思==どんな様子で暮しているかと、あれこれ想像して思いわずらうこと。