藤 田 東 湖 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)

(/rp>ひょう(/rp>ひょう(/rp>われ (/rp>なんじ(/rp>あい

(/rp>なんじ (/rp>(/rp>さけ(/rp>あい して(/rp>てん(/rp> じず

(/rp>しょう (/rp>そく (/rp>えい (/rp>きょ (/rp>とき(/rp>とも(/rp>おこ なう

(/rp>さけ (/rp> れば(/rp> (/rp>(/rp>さけ (/rp> くんば(/rp>てん

(/rp>なんじ(/rp> (/rp> する(/rp>とき (/rp>われ (/rp>いま(/rp> わず

(/rp>なんじ(/rp>てん ぜんと(/rp>ほつ する(/rp>とき (/rp>われ (/rp>ねむ らんと(/rp>ほつ

(/rp>いつ (/rp>すい (/rp>いち (/rp>みん (/rp>わが (/rp>こと (/rp> れり

(/rp> (/rp>じょう(/rp>きゅう (/rp>つう 何処(/rp>いずれ(/rp>へん
瓢箪よ、瓢箪よ。私はお前が気に入っている。お前はよく酒を愛して、しかも天に恥ずるところはない。
栄枯盛衰は時とともに移ろい、酒が入っている時にはちゃんと立っているが、中の酒が空っぽになればごろんと転がる。
お前がちゃんと立っているうちは私もまだ酔っておらず、お前が転んだ頃には私も眠りたくなる。
酔って、眠る。私はそれで十分だ。世間のいう出世しただの、落ちぶれただの、私には何の関わりもない。

愛酒不愧天==李白の詩 「月下独酌四首」 その二に 「天地既に酒を愛す、酒を愛して天に愧じず」 とあるをそのまま用いる。
消息盈虚与時行==『易経』 豊卦の象伝に 「天地の盈虚は、時と消息す」 とあるのを用いる。盈虚は日が上っては沈み、月が満ちては欠けるようなはたらき。消息は、消えることと生ずること。そこから消息盈虚で、ほぼ栄枯盛衰、吉凶順逆の意となる。与時行は、時運のめぐるままに従うこと。
危坐==正坐。瓢箪に酒が満たされていれば、きちんと立っていることをいう。
顛==顛倒する。瓢箪が空になって転がる。
吾事足==わたしがなすべき事は、もうそれだけで十分だ。足は、具足、満足の意。
窮通==窮は、行き詰まること。通は、順調にゆくこと。
何処辺==どこにあることやら、ということで、自分には関わりがない、知ったことではない、の意。