藤 田 東 湖 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)


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八月十八日夜、
      夢攻諳厄利亜
絶海連檣十万兵

雄心落落圧胡城

三更夢覚幽窓下

唯有秋声似雨声

弘化二年 (1845) の作。四十歳。
諳厄利亜は、イギリス。詩の前半二句は夢の内容、後半は目覚めて後の感慨。


海の彼方に戦艦を列ねて十万の兵を擁し、雄壮なる心意気をもってイギリスの城市を押し包んだ。
夢が覚めてみれば真夜中の暗い窓辺に、秋風の吹きつのる声がまるで雨音のように聞こえて来るばかりだ。

絶海==遥か遠い海。  連檣==船を列ねる。檣は、船の帆柱。
落落==志の壮大なこと。また、度量胆力の大きいこと。
胡城==胡は、中国北方の異民族の総称で、ひろく外国人をいう語となった。ここではイギリスを指す。
三更==真夜中。
幽窓下==幽は、暗くて定かに見えぬことをいい、深夜の暗い窓辺であるが、同時に作者が幽囚の身であることに繋け、幽囚の窓辺といった気分が響く。