藤 田 東 湖 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)


(/rp>まさ(/rp>まくら(/rp> かんとして
       (/rp>せい (/rp>ぜつ(/rp> えず、
        (/rp>(/rp>しょう (/rp>(/rp> たり
(/rp>れい (/rp> (/rp>むし湿(/rp>うるお して(/rp>むし (/rp>さら(/rp>かな

(/rp>へん (/rp>うん (/rp>つき(/rp> して(/rp>つき (/rp>いよ (/rp>いよ (/rp> なり

(/rp>しゅう (/rp>こう (/rp> (/rp>しょく (/rp>ひと(/rp>かん する(/rp>

(/rp>いち (/rp>だん(/rp>せい (/rp>しゅう (/rp>へい (/rp>(/rp>おか
将就枕不勝清絶、又得小詩
冷露湿虫虫更悲

片雲磨月月愈奇

秋光夜色無人管

一段清愁侵弊帷

弘化二年 (1845) の作。四十歳。
やはり小梅に幽閉中の詩。就枕は、眠りにつくこと。清絶は、きわめて清らかであること。


冷たい露に虫が濡れているかと思えば、虫の音はいっそう悲しく響く。一片の雲が月をかすめてゆくが、それでこそ月の風情は増すというもの。
秋の夜のこの美しい光景は、人の計らいで左右できるものではないが、破れた帳をとおして入ってくる光は、とりわけても清冽な物思いをもたらす。

奇==尋常でない宣しさ。  秋光夜色==秋の夜の光景と月色。
無人管==人が管轄できるものではない。人力でもたらすことは出来ない。
一段==ひときわ。  清愁==悲しいまでの清らかさ。 弊帷==古びたとばり。