藤 田 東 湖 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)


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次韻冢生詩四首 (二)
幽囚不許賦帰歟

衣帯日寛鬢日疎

何物尤為一身累

満腔尽是古人書

弘化二年 (1845) の作。四十歳。
小梅での幽閉生活の中、冢生 (塚生とも記す) 、名は行蔵なる者がただ一人出入りして東湖の世話をしていることが幾つかの詩篇からうかがえる。冢生は詩のたしなみがあり、本詩のごとく東湖の応酬した詩が何首か残っている。全四首。


幽閉の囚人となっては、 「帰らんかな」 と歌って故郷へ戻ることもゆるされぬ。日に日に痩せ細って着物もゆるやかになり、鬢髪も抜け落ちてまばらとなってゆく。
身の上にこの災厄をもたらした最大のものは、いったい何であったのか。古人の書物を読みかさねてきて、すっかり満身の血肉となっている生き方が、それを招いてしまったことだ。

賦帰歟== 「帰らんかな」 という詩を作る。
一身累==一身上の災難。累は、罪人を縛る索 (ツナ) で、そこからさらに煩いごと、災厄の意となる。
満腔==からだじゅう。満身に。