藤 田 東 湖 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)


(/rp>ちょう (/rp>せい(/rp>(/rp> (/rp>いん す、(/rp> (/rp>しゅ (一)
(/rp> 湿(/rp>しつ (/rp>いと わず(/rp>かん (/rp>しゃ(/rp>ろう

(/rp>なん (/rp>そう (/rp>ごう(/rp>(/rp>(/rp>(/rp>

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(/rp>しず かに(/rp> (/rp>(/rp> って(/rp>たく (/rp>きょ(/rp> とすを
次韻冢生詩四首 (一)
卑湿不嫌官舎陋

南窓寄傲亦吾廬

多情最愛春林鳥

閑蹴飛花落謫居

弘化二年 (1845) の作。四十歳。
小梅での幽閉生活の中、冢生 (塚生とも記す) 、名は行蔵なる者がただ一人出入りして東湖の世話をしていることが幾つかの詩篇からうかがえる。冢生は詩のたしなみがあり、本詩のごとく東湖の応酬した詩が何首か残っている。全四首。


じめじめと湿気が襲ってくるが、この狭い幽閉の居室が気に入らぬわけではない。南の窓から外を眺めていたりすると、これはこれで自分の住まいなのだと、鬱屈することもない。
いろいろな思いが尽きることはないが、なかでも春めいてきた林の小鳥が、そっと花びらを蹴り落として、囚われびとの居室にもたらしてくれるのが嬉しい。

卑湿==幽閉の居室が低地で湿気の多いこと。
官舎陋==官舎は幽閉されているのが水戸藩の下屋敷であることから、こういう。陋は、狭くてきたないこと。
南窓寄傲==寄傲は、平然として俗世間を見下す態度でいること。
謫居==罪人の住まい。謫は、罪を獲て追放されること。