藤 田 東 湖 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)


(/rp>まさ(/rp> (/rp>うめ(/rp>うつ らんとし、
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将徙小梅、
過吾妻橋畔有感
青年此地會遨遊

花下銀鞍月下舟

白首孤囚何所見

満川風雨伴覊愁

弘化二年 (1845) の作。四十歳。
天保十五年 (1844 。十二月に改元して弘化元年となる) 五月、小石川 (東京都文京区) の水戸藩邸に蟄居の処分を受けた東湖は、翌弘化二年二月、小梅村 (東京都墨田区) の下屋敷に移され、三年十二月に赦免されるまで、そこに幽閉されることになる。小石川の藩邸から小梅に移される時、會遊の地である吾妻橋のほとりを通り過ぎるにあてっての感懐。


若い頃、この辺りは愉快に遊びまわったものだ。桜の花のもと、みごとな鞍をおいて馬上に過ぎ、明月のもとでは舟を浮かべて。
今日、白髪頭となりはて、孤独な罪びととして目にうつるものは、客愁に添いかさなる隅田川一面の風雨ばかりである。

遨遊==遨、遊、ともにあそぶ意。  銀鞍==銀で飾った美しい鞍。
白首==白頭。白髪頭の老人。   孤囚==孤独な罪びと。
満川==川全体。
覊愁==旅愁。客愁。覊は、故郷を離れて旅にあること。