藤 田 東 湖 漢 詩 集

「江戸漢詩選 (四) 志 士」 ヨ リ

(発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:坂田 新)


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題 菊 池 容 斎 図
鮫龍得雲雨

非復池中物

如何風塵裡

徒使英雄屈

天保十五年 (1844) の作。三十九歳。江戸で蟄居中の、菊池容斎の描いた龍の図に書きつけた詩。菊池容斎は、狩野派に学んで歴史画を得意とした江戸の画家で、勤皇家としても知られた。明治十一年 (1878) 没、九十一歳。しばしば俗吏に妨げられ、ついには逼塞を余儀なくされた東湖自身の感懐を龍の画に寄せたものであろう。


鮫龍が雲雨に乗じて天に上れば、もはや小さな池の生き物ではない。
それなのに俗世間ではどうしたことか、英雄をむなしく埋もれさせている。

鮫龍==鮫は龍の一種で水生動物の長、みずち。龍の類はもと水中に生長し、機を得ては雲を呼んで天に昇るという。
風塵==世の中、俗世間。
徒==むなしく、ぬだに。
屈==かがみこむ。本来の志や才能を自由に伸ばせぬこと。